小田教授インタビュー2「言語は平和のために」

グローバル社会を生きる子ども達にとっての言語とは? 玉川大学文学部教授・言語学博士であり、”Angie & Tony”監修の小田眞先生にお話をうかがいました。

幼少期は、言語意識を養うことが大事

幼児英語教育の議論になると、賛成か反対かの2極が対立しているのが現状です。保護者も、マスコミの過激な意見に刺激され、「脳科学的にできるだけ早くに英語漬けにした方がいい」、「日本語が乱れるから英語導入は早すぎない方がいい」と、本来かみ合わない理由で対立し、意見が分かれる傾向があります。賛成派の意見も、反対派の意見もそれぞれ一理ありますから、そこまでむきになって対立する必要はないと思っています。 私は、幼少期の子どもには、「言語は日本語だけではない」、「外国語=英語ではなく、世界には色々な言語がある」ということを見せてあげることが一番大事だと思っています。英語主義ではなく、マルチリンガル(複言語)主義の発想ですね。カフェで、「砂糖の包みにはsugarって書いてあるね」とか、「パンはフランス語だよ」など、外国語を話題にしてもいいですね。つまり、言語意識を養うということです。ここで、是非お伝えしたいのは、言語の土台となるのは、あくまでも母語、多くの日本人の場合、日本語だということです。その先に、様々な言語があるという意識を持てると良いのではないでしょうか。 英語だけが外国語ではありませんので、子ども達にも、様々な選択肢を与えてあげることができれば、すばらしいですね。 ただ、英語を母語としない人の多くが、英語を国際共通言語として使用していることは事実です。ですから、英語を習得していると、可能性が広がるのは確かでしょう。また、第2言語としての英語の学習経験があると、第3、第4の言語を学ぶ際に、習得が速いというメリットもあります。そういう意味で、幼少期に楽しみながら英語に親しむことを目的としたブリタニカの英語教材”Angie & Tony”の監修をさせていただいています。

トランスリンガルという考え

玉川大学での私の授業では、グループ発表における使用言語を強制せず、自分たちで選ばせる「トランスリンガル授業」という試みを行っています。「英語での発表であっても、日本語での発表であっても、内容のみを評価対象にする」というものです。教授陣からは「不公平では?」という意見もありましたが、言語はコミュニケーション・ツールですから、自分が使いやすい、伝えやすいツール(言語)を選んでもらうのは自然なことだと思っています。 トランスリンガルというのは、言語の境界をとりはらい、状況に応じて使用言語を自由にスイッチするという発想です。たとえば、外国人と話すときは、挨拶や簡単な言語は相手の母国語を使って喜んでもらう、話が複雑になったら英語にする。あるいは、専門分野であるファッションのことを話すときは、イタリア語が便利だからイタリア語を話す、それ以外は英語にする、あるいは母国語に戻る、というイメージですね。ボーダレスの時代にふさわしいのは、「一文の中に、2つの言語が混ざっていても、いい。相手と意思疎通ができることが先決である」ぐらいの、地球規模の視野と、おおらかな発想ではないでしょうか。

4技能主義からの卒業

日本の英語教育現場で一般的になっている「英語4技能」という言葉には違和感を抱いています。テストを作りやすいから便宜上分けているわけですが、言語能力はすべてがつながっています。母語である日本語力にあてはめると、4技能に分けることの不自然さがおわかりいただけるでしょう。 外国語は、環境に応じて必要な技能も違います。ところが、4技能テストというのは、4技能すべてにおいてあるレベルに達していないといけない、ということが前提になっています。 外国語のスピーキングでは発音にもこだわる傾向がありますが、国語の授業では発音チェックはありませんよね?日本人はRとLの違いにこだわりますが、発音が多少違っても、会話の中で使われる単語なら、文脈から理解してもらえることがほとんどです。 一生懸命コミュニケーションを取ろうとしている人の発音を指摘するのは、ただの意地悪ですから。英語の発音だけ「ネイティブ=正しい」と思い込み、そこにこだわって、英語を話すことが怖くなってしまうなら本末転倒ですし、理想的な英語教育とはいえないでしょう。特に幼児期に必要なのは、母語を土台する言語能力を作った上で、楽しみながら総合的なコミュニケ―ション能力を養うことだと思っています。 私が監修しているブリタニカの英語教材”Angie & Tony”は、保育園の先生など、いわゆる「ネイティブ」ではなく、英語教育の専門家でもない人でも、幼児と一緒に英語に触れる機会を作れるよう工夫されています。

Can Do Listは、カーナビとして使う

ブリタニカの英語教材”Angie & Tony”では、各シリーズに英語の習熟度を計るCan Do Listをつけていますが、これは「できないことを確かめるチェックリスト」ではなく、「できること」「できるようになったこと」を確認していただくことを意図しています。「全部できないとだめ」と思わないでいただきたいのです。 欧州評議会(Council of Europe)が、ヨーロッパで外国語を学ぶ人の到達レベルを示す指標としてまとめたCEFRを意識した取り組みが、日本の英語教育の現場でも急速に広がりをみせています。CEFRは、Common European Framework for Reference of Languagesの略で、英語の資格やテストではなく、38言語について、「その言葉を使ってなにができるか(CAN-DOリスト)」を6段階に分けて細かく記述した「参照枠」にすぎません。 CEFR自体が最終ゴールなのではなく、自分の立ち位置を確認し、自分にとって必要なゴールまでの道筋を示してくれるカーナビのような役割だといえるでしょう。 ところが、国内でCEFRをもとにして導入が始まっている様々な枠組みや、付随するCAN-DOリストは、全部できることを目指す「テスト」として使われてしまうのではないかということを、私は危惧しています。

 完璧を目指すバイリンガル主義が挫折と偏見を生む

英語教育というと、「パーフェクトなバイリンガルにしたい」「ネイティブスピーカーに近づくことが目標」と完璧を目指してしまい、結果として挫折するケースも珍しくありません。日本人でも、みんながアナウンサーのような標準語を話しているわけではなく、方言もあります。国際共通語である英語は、使用している人の8割が英語を母語としない人たちですから、当然アクセントもさまざまです。 私たち日本人も、「ネイティブスピーカーの英語」にとらわれることなく、どんな英語でも理解できるようになることが理想です。同時に、私たちが話す英語も、「アクセントがあっても、文法的に多少の間違いがあっても、対話の相手に伝わる英語であればいい」と考えてはいかがでしょうか。 ネイティブ並みの発音ではない英語に偏見を持つような風潮があるとすれば、とても残念なことです。言語はコミュニケーション・ツールであり、人を排除するためではなく、平和のためにあるのですから。

(インタビュー:鯰美紀)

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